唄子師匠 4月8日

〈ま〉の日常

 

 

京唄子師匠がお亡くなりになりました。

 

 

案じておりました。

 

 

師匠は百までお生きになる方だと信じてました、八年前までは。

 

 

背骨の骨折の時、まだ八十過ぎやし、体力はあるし、

手術の道を選ばれればいいのに、豪快な師匠の実は繊細さが出てしまって

型にはめる方を選ばれたとき、もし……と思ったのが……

 

 

優しい方でした。

 

 

本当に優しい方でした。

 

 

セリフ覚えが、ハンパなくすごい方でした。

 

出番の袖で「師匠、ごめんなさい。これ、言うてほしいんです」と

四行もあるようなセリフを口立てで言っても

「……ふんふん、なるほど、そういう意味な。分かった、センセ、任しとき」と

言って、そのまま舞台に出て、ちゃんと仰る方でした。

 

 

 

ジャン・コクトーのいう〈聖なる怪物〉でした。

 

 

 

これは懐かしい『おためし遊ばせ』のチラシです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

師匠の恐るべき伝説、

楽屋であっという間に全セリフを覚えて

そのまま本番を見事にやったとか、

絶句してセリフを忘れた人の長ゼリフを、

「あんたが言いたいのはこういうことやろ」と

全部ホローしたとか……

 

 

 

別嬪さんでした。

 

 

漫才さんではあり得ないほどの美人でした。

 

 

 

新幹線でたまたま会って(何度も)

「センセ、どないしはりましてん!」

と仰る声と笑顔が忘れられません。

 

 

うちの地元のベルディホールにもいらしてくださって

ボクの母親に会って、「センセのお母さん、色が白いさかい、長生きしはりまっせ」

と言うてくれはりました。

 

 

 

 

 

 

吉本新喜劇の中山美保さんで驚いているのに、

師匠まで……

 

 

 

 

師匠、

 

お疲れさまでした。

 

『おためし遊ばせ』の最後のセリフ、

 

「おためし遊ばせに乾杯!」

 

 

 

師匠の見事な人生に!

 

 

 

お疲れ様でした。

 

 

 

 

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