なぜ?

池田政之は職業脚本家、そして職業演出家です。自身で劇団を立上げ、その時々、自身が表現したい作品を執筆発表するわけではなく、製作会社さんや他の劇団より依頼を受け、報酬を頂いて参りました。ですから主に大劇場で上演されるいわゆる商業演劇を中心に、テレビ、映画と活動して参りました。幸せです。

 

ですが──僕は根本的に劇作作業が好きです。時間が空くと発表のあてがなくとも、その時々書きたいものを書き溜め、今では二十数本の台本が積んであります。これら作品は恐らく日の目を見ないのでしょう。そう思った時、少しむなしくなったのも事実です。そこで、これらの作品を自分で発表してみよう、ちょうど舞台発表作品百五十木目(※I)に自分で新作を上演してみようと思い立ちました。そこで立上げたのが劇団〈ま〉なのです。
※1再演でも、配役・劇場が代わり、それにあわせて書き直し、顔寄せ・ギャラも新たになる場合は一本と数えています。

 

劇団の体をなしていない、たった一人の劇団です。小さな劇場での短期間公演です。第二回公演もいつになるか分かりません。でも仲間やスタッフの協力を得、焦らず、急がず、こつこつとやっていこうと思っています。とはいえ、第一回公演の『審査員』は新作です。結局積んである二十数冊は、減っていませんが(笑)。

 

いろいろ決めねばならない事が出てきました。まずは劇団名。
これはあっという間に決めました。劇団〈ま〉。
劇団〈ま〉のまは、僕の四つの名前、池田政之のま、(名取名)藤間雅也のま、(雑文を書く時の)橋間嘉作のま、(外国が舞台の作品を書く時の)マルティーヌ・ガブリエルのマ、です。皆さん「芝居の間でしょ」と仰て下さるけれど・・・

 

なに?

次に決めねばならぬ事、上演作品です。
最初は『ボクはヒロイン』という新作を予定していました。台本も出来ています。これは劇団NLTで若手を中心に上演した『シャルルとアンヌと社長の死体』の続編です。シャルルは僕がM・ガブリエル名義で書いたフランスが舞台のコメディで、演劇雑誌「テアトロ」さんで二月期東京の芝居のベストスリーに選ばれました。
そこで続編を書き、これを劇団まの第一回にと話を進めていたのですが、シャルルを演じたNLTの坂下信人君が急遽カタギになっちやったので、積んである台本行きになってしまいました。
では何をやろう?
僕は、昨年末まで日本劇作家協会には参加しておりませんでした。日本演劇協会にさえ加入していればいいと。というより、生来の怠け者。加入手続き等がめんどくさかっただけなのですが。
耳にしていました。劇作家協会の新人戯曲賞の最終審査は公開でされると。普通は密室での審査です。
審査員の人たち、すごいなあ。よく公衆の面前で出来るなあ。強靭だなあ。
数年前、知り合いが最終候補になりました。公衆の面前でボコボコに批評されました。ぜひ一度見てみたくなり、昨年見学に参りました。(入場費1000円払って)いやぁぁぁぁぁ! 面白かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

あんな面白いもの、滅多にありませんよ。下手な芝居より全然面白い!(その前の全候補作リーディングから)約五時間、全く退屈しませんでした。
その時、これは芝居になると思ったのです。それが『審査員』なのです。

もちろんこのお芝居はフィクションです。全て僕の創作です。

 

ちなみに七月半ば発売の演劇雑誌「テアトロ」八月号に、戯曲は掲載されます。買って下さいね。

※稽古場の様子など日記に更新して行く予定です。

2012.6.24 池田政之