脚本家なんて 4月13日

 日記 〈ま〉の日常

 

 

 

本日、あ、もう昨日か。

 

東京の某稽古場で博多座コロッケさんの公演の稽古が始まりました。

 

ハマキヨ、山村紅葉さん、もみちゃんのとこの山口君も出ています。

 

ですが、ボクは仕事の都合で暫く不参加。ま、演出はボクじゃなく

ボクは脚本だけなので、ボクがいなくっても大丈夫でなんですが

普通脚本家も稽古の初日・顔合わせ・本読み合わせには出席するもんなんですよ。

 

ボクの都合ですみません。お詫び申し上げます。

近々、必ず顔を出しますね。

その時には、ハマキヨ、紅葉さん、山口君、飲んでやって下さいませ。

 

でも実は何の支障もないと思いますよ。

コロッケさんも、演出家の赤塚さんもいらっしゃるのですから。

脚本家なんてそんなもんなんです。ニッコリ笑って座ってるだけですから。

 

 

 

さて昨日、あ、もう一昨日か。そればっか。

 

4月11日で今年酒を空けた日数が50日になりました。

 

毎年100日は開けようと努力することに決めて、でもなかなか達成できなくて

でも、去年は父が亡くなったためか、飲んでる場合じゃない日が多く

130日も空けました。

 

それが今年は始まって101日目で50日。半分は空けたことになります。

 

この分だと、夏の終わりには100日達成なんて事になるかも。

 

 

肝臓が綺麗です。

 

だからかどうか、数日空けた後に飲む酒の、まぁまわりの早いこと早いこと!

 

普段なら大体純米酒7~8合くらいから次のステージ(?)に行く酔い方が

4合くらいで行ってしまいます。

2、3軒は回るのが当たり前が、1軒でおなか一杯、いえ酔い方ヘロヘロ。

 

やっぱり酒は毎日飲み続けないと、弱くなるようですぞ。

え? それは単にトシだって?………かもね………

 

 

 

 

 

ここでちょいと話題を変えて、以前にも書いた高木彬光大先生の短編集、

それも神津恭介主役の密室物ばかり集めたスグレものです。

 

先日放送された片岡愛ちゃん主演の『影なき女』も、

傑作『妖婦の宿』も収録されています。

 

絶対お得な短編集。皆様是非。

 

 

 

 

ここで一つご報告です。

 

3月19日より池袋シアターグリーンで上演した劇団NLTの『舞台は夢』

ボクがコルネイユの原作を脚色した舞台です。

 

そのパンフレットに掲載ミスがありました。

 

劇中に歌があったのですが、その作詞が演出の竹邑類さんと載っていました。

 

ボクが気付いたのは千秋楽の後。

あれは、ボクが台本を書き、演出の竹邑さんが劇中歌を入れようと提案され、

ボクのセリフに岩崎健一郎さんが曲をつけました。

それを制作もスタッフも出演者も誰も気づかず、

なんでやねん。みんな歌ってる歌詞、台本に書いてあるやん。

 

そこでNLTのホームページに訂正とお詫びが掲載されることになりました。

 

既に載ってます。

 

 

 

 

 

 

こういうミスは結構あるんですよ。

 

脚本家は、台本を書いたらそれで終わりで、常に現場に顔を出す訳じゃないから

直ぐに存在を忘れられてしまうのです。脚本家なんてそんなもんです。

 

 

昨年の夏公開の映画『忍たま乱太郎・夏休み宿題大作戦の段』は

尼子騒兵衛先生の原作を基に、ボクが物語を作り、つまり脚本をしました。

それに伴い、ボクの脚本を基に、その漫画本とノベルズがポプラ社から

発売されました。

ところがその2冊ともボクの名前が出ていませんでした。

 

知人から連絡がありその事実を知ったのは秋。

そんな本が出版されている事すら知りませんでした。

直ぐに連絡をしたところ、直ぐに謝罪に来られました。

でも回収してすり直すのは勘弁してほしいと言われ、そこは承知しました。

 

さて、今年になって、先月ポプラ社のホームページを見たら

それら2冊が掲載されているところにボクの名は依然ありません。

 

ショックでした。

 

発売され書店に並んでいるものにボクの名はなく

国会図書館に収められているものにもボクの名はなく、

ホームページにもボクの名はなく、

ボクが書いた事実が未来永劫存在しないという事になってしまうのです。

 

また電話しました。でも電話する時って結構勇気いるよ。

 

ようやく池田の名がホームページに、つまり世間に対し記載して頂きました。

 

これです。

 

 

 

 

 

一番ケツに乗りました。

ボク、2番目なんやけどなぁ。

ま、載せてもろただけでも御の字なのかなぁ。

 

 

 

NHKの『花鳥風月堂』でも8か月間もホームページにボクの名を入れ忘れる事件が

起こってるし。

 

地方劇場に行ったらホテルが予約されていなかった。

ボクだけ弁当がなかった。

打ち上げに呼ばれなかった。

ボクが書いた台本なのに送ってこなかった。

ボクの脚本で複数人が受賞したのにボクには授賞式の案内さえこなかった。

初日に脚本家の席を用意し忘れて、しかも満席、ボクは補助席で観せられた。

テレビラテ欄に名前の漢字を間違えられた。雅之、正之、正人………

それならまだまし。テレビ局情報欄にボクの名前がなかった。

 

これらはすべて事実です。

 

過去一番笑えたのは、稽古スケジュールが来てなくて、ボクが知らない間に

稽古が始まっていて、プロデューサーから電話が。「何で顔合わせに来ないんだ!」

「知りませんよ。ちなみに台本も来てませんけど」

プロデューサーが調べて事実と分かり、すぐ謝ってこられました。

これも実話です。笑えるでしょ。

 

一番恐ろしい話。

どうせ脚本家なんて来ないだろうと、ボクの名を、売り出したい奴の名にして

発表していた。実話です。こわ。

 

 

脚本家とはそういうものなのです。

それともボクがそういう星の下なのかなぁ。

 

もう慣れっこになっていました。

そんなもんだと思い、気にするのをやめました。

 

そんなボクがこんなことを書く。書きたくなるようなことが起こったからです。

 

 

 

舞台が終わって、役者さんたちと演出家はお互い口々に健闘を称えあいます。

脚本家とはまずありません。

 

ボク自身、演出もするからよく分かります。演出もした時は言われても

脚本だけの時はまずありません。

 

勿論制作サイドからは言って頂きますが、役者さんからはですよ。

 

そりゃそうです。役者さんと演出家は何十日も苦しい稽古を共にしている訳ですから

もう同志です。

一方脚本家は、顔寄せにチラッと来て、後はゲネと初日を見るくらいですものね。

脚本家の顔すら覚えていない役者さんがいてもそれはしようがありません。

 

脚本家とはそういうものなのです。

 

でも、そんな脚本家にもちゃんと「ありがとう」と言ってきて下さる

素晴らしい役者さんもいらっしゃいます。

そう言って下さった方々、忘れられません。大好きになります。

その方々の為ならどんな本でも書こうという気になります。

そしてそれらの方々はみんな、有名な方です。やはり出世される方は違います。

 

 

 

 

それに対し、うちの若い役者なんて誰一人何も言ってきませんよ。

『舞台は夢』の後、二度も打ち上げをしたらしいのですが、ボクのところには

二度とも誰からも連絡はありませんでした。

苦労して脚本を書いたってこんなもんです。(笑)

 

舞台が終わって3週間たっても

竹邑さん亡き後演出もなさった劇団代表の川端槇二さんと、木村有里さんの

大ベテランの大先輩以外、誰からもありません。

 

勿論言いましたよ。ボクもいる劇団だもの。

一度目に来られなかったスタッフの為にもう一度出演者が全員集まって打ち上げを

したと聞いて、僕には何も来ていないけど、それも二度とも、と。

 

二度目を差配した若い女優にも言いました。彼女は「池田さんがこなかったのは我々

のミスですと直ぐ出演者全員にメールします!!!」と言いました。

 

それから数日。

若い役者たちから今だに何一つありません。「僕知らなかったんです」

「わたしも変だと思ったんです」「すみませんでしたぁ!」 何もありません。

 

それよりも、ボクは打ち上げに出ていないわけですから、誰とも会ってないわけで、

だったら「無事終わりました」「お疲れ様でした」「ありがとうございました」の

その一言の連絡すらありません。

 

ボクが怒っているのは、「お疲れ様」がないからではありません。

二度とも打ち上げに呼ばれなかったからではありません。

そんなの脚本家にとって日常です。

ボクはちゃんと内部で問題提起をし、すべてが分かった上でも、それでも

若い奴らが誰一人何も言ってこないのが情けないのです。

 

これは内輪の話です。こんなところに書く話ではないだろうと仰る方もいらっしゃる

でしょう。内々で若い子皆集めて説教すればいいだろうと。仰る通りです。

でも、今の子は右から左なんです。

事実、大先輩の木村有里さんが、若い子に「謙虚に」「感謝しなさい」「どうして

ありがとうの一言が言えないの」といつもいつも仰ってきました。

それでもこれですもの。

 

脚本家なんて関係ないと思っているのでしょうね。

それが劇団の先輩であってもです。もし外部でこんなことしちゃったら。

怖くて外部につれていけません。

だから、あえてこの場で書いた訳です。ボクは本気だと知らせる為に。

 

 

尊敬する大俳優、大女優の方々が、ボクの書いたセリフを、舞台上で、

カメラの前で言って下さる。光栄です。宝物です。

 

 

それに対し、まだ若い、無名な、まだまだ下手な役者に対して、

そんな君の為にも、あなたの為にも、君の顔を、あなたの顔を思い浮かべて、

一所懸命セリフを書いているんです。

駆け出しの君の為に、あなたの為に、君の顔を、あなたの顔を思い浮かべて

セリフを書いてくれる人がいるのです。

 

どうしてもっと謙虚になれないのかなぁ。

お互い感謝し合えないのかなぁ。

 

若い役者にとって、それが信頼につながり、次のステージに行く切符になると

どうして分からないのかなぁ。

 

媚を売れ、ゴマをすれと言ってるんじゃないんです。

単純に、純粋に、「ごめんなさい」「ありがとう」となぜ言えないのでしょうか。

まして間違っていたと分かったのなら。 

 

 

初めてです。こんなこと書いたの。

 

 

何の関係もない皆様には、ご迷惑な話を延々と書き連ねました。

お詫び致します。お許しください。

 

どんな世界でも若い人たちを指導するというのは大変ですね。

かくいうボクだって、若い頃はクソ生意気でした。今でもかな……

お前が言うな!と仰っている先輩方の声が聞こえてきます(笑)。

 

でも感謝してきました。

導いて下さった方、教えて下さった方、応援して下さった方、書ききれません。

皆様のおかげで今の僕があります。もちろんまだまだですけど。

心から感謝でいっぱいです。

 

 

 

 

 

舞台の脚本家を目指す方々、脚本を書いて渡したら、

後は、現場において直ぐに忘れられるのが脚本家です。

それでも書かなければならないのが脚本家なのです。

 

そこのところを覚悟して頑張って下さい。

 

ま、もっとも、あんまり失礼な奴らには、執筆を拒否してもいいと思いますよ。

脚本家だって人間です。

そんな奴らの為に書くモチベーションを維持するなんて至難の業です。

ストレスで身体を壊すだけですから。

ボクだって、あまりにひどいうちの若い奴の為に、苦労して、徹夜して、

骨身を削って本を書くなんて、まっぴらだもの。

 

いつの日か、今日のこの日を振り返って、ボク自身「今思えば、あんなことを書いて

汗顔の至りです」と反省する日が、「うちの若い子たち、成長しましたよ!」と胸を

張って言える日が、一日も早く来ますように!

 

 

あ、でも、莫大な報酬をもらえるなら話は別ですけどね。直ぐに書いちゃう。

これ絶対本音やな。って、ばらすなよ。

 

 

 

 

 

 

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