終わりよければ 4月29日

〈ま〉の日常 読書感想文

 

 

さぁ、月末恒例投稿数帳尻合わせの時節がやって参りました。

なんやそれ。ばらすなよ。

 

実はこんな本を大阪新歌舞伎座への往復の新幹線で読んでいました。

 

 

 

ジェフリー・ディーヴァーの短編集です。

 

ディーヴァーは『ボーンコレクター』を書いた大ベストセラー作家です。

 

先日彼の、ジェットコースター大どんでん返し長編ミステリー『魔術師』

(イリュージョニストと読みます)を読んで、そのどんでん返しぶりに

感動したので、今のスケジュールに合わせ短編がいいだろうと

この本を買ったわけです。

 

ちなみに『魔術師』はこちら。

 

 

上下巻の大伽藍ですぞ。

 

 

さて『クリスマス・プレゼント』にもどりませう。

内容は約30~40ページの短編が16本。

どれもが必ず最後にどんでん返しがあるというふれこみ。

確かにすごい! 短編はこうこなくっちゃ。特に『三角関係』はすごい。

 

でも………

 

どんでん返しが見事であればあるほど、少々安易に思えてしまうのは

ボクだけでしょうか。

「あらら。ふぅん。なるほど」で、「えええええええ!!!」とはならないのである。

 

長さなんだと思う。短編だからあっという間に結末になる。そしてドンデン。

驚くんだけれど感動が薄いのは、困難な道のりの長さなんだろうなぁ。

長い道のり、一歩一歩、苦労して、やっと終盤に来て、

そこでいきなり食らう大どんでん返しのパーンチ!

だからこそ、その衝撃も大きく、

つまり安易に手に入れるものではないのかもしれません。

 

まだ子供のころ、星新一さんのショートショートが大好きで、

次から次と読み進んでいた感覚というのかなぁ。

ショートショートはいわば良質の小噺。一瞬の笑いを求めていたからいいけど、

本噺には大作と前座噺があって、前座噺のオチが良ければ良いほど、

少々もったいなく、軽く感じてしまうあの感じというのかなぁ。わからんがな。

 

素晴らしいミステリー短編は星の数ほどあるけれど、

トリックやミステリー性よりも、ドンデンに命をかけた短編だと、

こういう感覚になるのかもしれません。

 

切れ味抜群の大ドンデン『三角関係』でさえ、『魔術師』の正体がッ、ええええ!!

の時とは、少々アドレナリンの出方が違うんですよ。

 

とはいえ、素晴らしい一冊には違いない、うん。

特に『三角関係』はぞっとするほどお見事。何べん言うてんねん。

是非読んでください。個人的には『非包含犯罪』『ウィークエンダー』も

好きでした。

 

 

なぜこんなことを書いたかというと、

今、大阪新歌舞伎座でやっている、『人生は、ガタゴト列車に乗って……』

 

大阪のお客様は芝居に厳しい。

特に喜劇には、笑いの本場だけあって本当に厳しくご覧になる。

 

ボクも関西人だし、喜劇は一杯やってきたし、

過去、松竹新喜劇でも、また吉本さんでも本を書いている。

それでも、初日はヒヤヒヤする。

 

それが……うけた!

一幕はそうでもなかったけど、二幕になった途端、もう入れ食い状態。

特に、最後二幕五場。浜さん演じるマスさんの独白場面は、

拍手、歓声が止まらず、客席がどよめいた。

それと二幕三場の浜さんととん平さんの場面は、

お二人の恐ろしいほどの実力によって沸きに沸いた。

 

そうなのだ。

一幕があって、

キチンと作りこんでいった一幕を経て、

お客様は、二幕にすべてを飲み込んでくださったのだ。

主人公の一番の味方になって下さったのだ。

マスと共に笑い、マスと共に泣く。

 

長編の大どんでん返しがぴたりハマったのだ。浜さんだけにハマった。アホ!

 

何事も終わりよければである。終わりがよくなければ、それまでどんなに良くても

幕が下りるとき後味の悪い芝居になって、台無しとなる。

だから、時間経過とともに盛り上がることが大事で、つまり

そのために、そこまでがあるのだ。

手を抜かず、最初から飛ばしすぎず、丁寧に………

 

ジェフリー・ディーヴァーの『クリスマス・プレゼント』から

そんな事を思った今日この頃です。

 

何とか1日分クリアしたぁ………せやからばらすなて。

 

 

 

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