第5回NLTコメディ新人戯曲賞決定しました。 10月21日

池田政之の仕事

 

   

 

お待たせしました。

第5回NLTコメディ新人戯曲賞、決定しました。

 

 

 

 

 

 

本日劇団NLTのホームページに掲載しましたが例年通りボクのホームページにも

掲載しておきますね。

 

 

今年は43本の応募がありました。

 

 

これも例年通り、まずボクが〈アイデア(オリジナル性含む)〉〈文章・セリフ〉

〈構成・展開〉〈喜劇性〉〈完成度(再稿の可能性含む)〉の5項目 各10点の

50点満点で採点。一覧表にし、全作品の寸評を付け、全審査員に上申しました。

 

 

 

さて、今年の傾向です。

  

今年、NLT第二文芸部全員がテレビドラマで脚本家デビューした影響かもしれま

せんが、映像のシナリオが何本も送られてきました。例えばシーン1 から始まって

シーン60 までのような。

我々が求めているのは舞台脚本、つまりは舞台戯曲です。

中には堂々と シナリオ と明記されてきた方までいらっしゃいました。

もう一度申します。我々が求めているのは舞台戯曲、そしてコメディ戯曲です。

どんなに優れた映像シナリオでも、舞台でない限り、対象にはなりませんので。

とりあえずは読みましたけどね。

 

 

それと幽霊や異次元等々、異界のものが登場するのは8作でした。

異界のもの – つまり、幽霊、タイムスリップによる過去未来の過去人、未来人、

妖怪、物の怪、死神、宇宙人etcetc……

毎年大体2割がそうですね。別に構いませんよ。僕自身いくつも書いてるし。そのど

れもが再演になってるし。とにかく第5回となると今までで40作は来ているわけで

す。なので、ありきたりのアイデアでは厳しいですね。現実に、小劇場でも同じパタ

ーンのもの、よくお目にかかるし。「あ、思いついた!」と思っても、もういっぱい

あるわけで、その向こうへ行かないとねぇ。

 

 

今年はなんと93歳の方が応募。残念ながら一次通過とはなりませんでしたが、

心より敬意を表します。来年も舞台脚本をお待ちしています。

 

 

 

 

それでは一次通過作品です。

 

あ、その前に1点だけ。

実は高得点を取られた作品に、海外の名作戯曲を脚色されて応募された方がいらっし

ゃいました。ご本人もキチンと 

  原作 ○○○○  翻訳 ○○○○  脚本 ご本人名

と明記されています。そこは正直でいいのですが……問題はそこではありません。

ボク、キチンと採点しました。トップクラスの高得点、最終候補確実レベル、いえ

佳作は確実レベルです。当然です。基がいいんですから。でも……

脚本と書かれていますが、あれは脚本と明記できるレベルではありません。脚色か、

潤色か、補綴のレベルです。つまり骨子、設定、構成展開は原作通りです。小説やマ

ンガを原作として脚本化するレベルとは違うのです。なれば著作権は、脚本の立場と

してお支払いするレベルではなく、何もかも原作者でしょうね。

プロが仕事として、こういう直しレベルでの仕事は存在します。それはそういう目的

意図を持った仕事だからです。

ですが新人賞の公募で、これを認めるわけには参りません。最も大事なオリジナル性

などほとんど存在せず、かつ、これを認めれば皆が名作戯曲を少し直せば済んでしま

います。

別に脚色でも本歌取りでもバスティーシュでもパロディでも構いませんよ。自分の物

にされて、オリジナル性が勝っていれば。

最終候補になった『ある愛の物語』はなぜ最終になったのか? 作者が「シェイクスピ

ア作『じゃじゃ馬慣らし』より」と明記されています。つまり基があるわけです。で

すが『ある愛の物語』は完全に自分のものにしてらっしゃいました。『じゃじゃ馬慣

らし』よりと明記されていなければ、誰も気づかない、完全にご自分のものにしてら

っしゃいました。つまり作者のオリジナルと言って何の問題もないレベルだったから

です。

結果……問題の作品は、高得点ですが採点不能とさせていただきました。ご理解くだ

さい。

 

 

 

 

 

では一次通過作品です。以下の9本です。

 

   『この度は誠に、ご愁傷様で……』

   『病める時も、健やかなる時も』

   『家は燃えているか』

   『ある愛の物語』

   『告白』

   『我が友ドラキュラ』

   『コンビニ最後の日。で、地球最後の日』

   『東松山物語』

   『こちら人生110番』

 

 

 

更に絞り込みました。今年は一次通過として選んだのが9本なので、二次を飛ばし、

次を最終候補として以下の5本を選びました。で劇団のホームページには以下の5本

を掲載した次第です。

 

   『この度は誠に、ご愁傷様です……』

   『病める時も、健やかなる時も』

   『家は燃えているか』

   『ある愛の物語』

   『告白』

 

です。

 

 

 

 

まず最終に至らなかった作品の感想です。

あ、毎年そうですが、これは審査員一同の意見にボク個人の意見も入っています。 

ですので気にしたくない方は気にしないでください。

 

 

『コンビニ最後の日。で、地球最後の日』

SFコメディとしてはちゃんと出来ています。ただエピソードの羅列のモンキリ型が気

になります。それと戯曲の間口が狭いというか、どうしても小品感が否めません。二

本立ての一本ならいいかもしれませんね。

 

『東松山物語』

いいお話ですね。年齢的に介護や認知症は身につまされました。(笑) もう少し書き

込んでほしいなぁ。それとこのタイトルだと……タイトル、変えません?( ´∀` )

 

『こちら人生110番』

面白いコメディになってます。ただ各エピソードだけで進行していますし、結末が今

一つわかりにくい。もっと最後の犯人探しとドンデンはうまく生かせたはずですよ。

それと年齢書いといてください。更に20ページ以上の超過です。で-3点。それでも

ここまで来ました。面白かったのに惜しいなぁ。

 

『我が友ドラキュラ』

書ける方です。アイデアもいいし、お洒落だし。

惜しいのは2つ。おチャラケと、構成のありきたり。逆にすればいいんですよ。まず

舞台上でドラキュラの新作が上演されているところから始めて、ドキュラを演じてい

る俳優が本物で……ね、面白くなりそうでしょ。最終候補じゃなけど再応募枠該当作

品にしたいなぁ。

で、もう一度読み直しました。三度目ですね。で……逆にしなくても、展開はこのま

でもいいかなぁ……このままでも何とかなる気がしてきたぞ(笑)

とにかく、それらを踏まえ、会議に臨み、最終候補ではないけれど、再応募枠該当作

品にさせていただくことになりました。この批評の最後に推敲案を書いておきまし

た。是非読んだ上で、来年もう一度チャレンジしてみてください。

 

 

 

 

さて、最終候補の5本です。

 

『この度は、誠にご愁傷さまで……』

昨年度応募の再応募枠作品です。

これまでの4回で7本が再応募枠になりました。内4本が再応募されてきました。

初めてです。最初の応募作を超えたのは。素晴らしい。

特に昨年ボクはこう指摘しました。最後がありきたりなので、何かドンとくるものは

ないかと。いやぁ、驚きまた。すごいのを考えられましたね。失礼ながら、ご年齢を

思えばなんと柔軟な頭をしてらっしゃるのか。実はあなたではなくてお孫さんがお考

えになられたりして。( ´∀` ) 構いませんよ、どなたでも。( ´∀` ) という冗談

が審査会で出たほどです。( ´∀` ) 後は最後に梅子の与太夫に対する懺悔と、皆の

懺悔があれば。それと台詞、随分うまくなられましたが、心地よく流れるところと、

流れを切るところの選択がうまくいってないところと、繰り返すセリフ尻が、書き言

葉になっているところが少々。

更に与太夫って。( ´∀` ) そんな名前、親が子に付けます?( ´∀` )

とにかく一昨年の初応募からここまで来られた大進歩には感動です。

 

 『病める時も、健やかなる時も』

第2回にも応募された方です。ワンシチュエーションコメディとしてとてもよく出来

ていますね。大変面白く読ませていただきました。ただ、大会社の御曹司の結婚式に

しては、ちゃっちいですね。( ´∀` ) ボーイも何もかも、ビジネスホテルみたいで

す。( ´∀` ) ま、それは装置と出演者等で何とかしますか。それと、最後に新郎の

母の気持ちの変化のみ、ちょいと直しましょうね。なぜって? それはここが日本だか

らです。( ´∀` ) 説明になってるかな?

 

『家は燃えているか』

この作品は、審査会で上記2作と争いました。惜しいです。

小品なんですよ。基本の物語のみ、かつ芝居の間口が狭いんです。アイデアはいいの

に、そこが結局2作に及ばなかたところです。昔の劇場芝居の3本立てのうちの1な

ら、即決定ですね。惜しいなぁ。例えば、あと11ページ余っています。雨が降ってき

たらどうなります? 主は、実は今日災害にあった友人の見舞いに行くはずで、逆にそ

の人に来られらどうなります? 今日、就職が決まった親戚にお祝いを渡すはずだった

らどうします? あ、それと既婚の妹、苗字は同じ山下じゃない方がいいですよ。

キチンと書ける方です。再応募にしますか。もちろん新作も待っていまね。

 

 『ある愛の物語』

 シェイクスピア『じゃじゃ馬慣らし』よりと明記されていますが、さっきも書きまし

た通り、完全にご自分の物にされています。明記されていなかったら分かりません。

素晴らしい。

ただ、やはりまだセリフの流れからくる完成度が、もたついています。惜しい。

そうそう、最後に投票になったのですが、女性陣の票を一番多く集めましたよ。

来年も待ってますね。

 

『告白』

鉢合わせのパニックコメディとしてよく書けています。でも……

軽いんですよ。芝居の格が低くなってしまってるんです。ドタバタコメディだからラ

イトでいいんです。でも、格を落としてはいけない。このままのストーリーでボクが

セリフを直すと仮定したら、頭からすべてになってしまうでしょうね。ではどうすれ

ばいいか。ううーん、口で言うのが難しい。(指で打ち込むのがですね) あ、誤解の

ないように。セリフが下手というじゃないんです。うまいんです。でも、低いんです

よ。

せやなぁ、ドタバタコメディの名作をいっぱい見たり読んだりなさるか、実際に脚本

教室でその部分だけ指導を受けるか……そんなん教えてくれるんやろか。

いっぱいいってごめんなさい。うまいんですよ。だからボクも最終候補に推したんで

す。ホントに惜しい。これにこりずに来年も新作待ってますね。

 

 

 

 

さて、喧々諤々の審査会です。

 

残念ながら今年も正賞は見送りとなりました。

 

で、佳作です。

更に喧々諤々となり、最後は投票になりました。

1人3点。分配自由。使い切らなくても可。

で、こういう順位になりました。

    『病める時も、健やかなる時も』

    『この度は、誠にご愁傷様で……』

    『家は燃えているか』

    『ある愛の物語』

    『告白』

上位2作と3作目に差が、更に3作目と4作目に差が……

 

 

で、こうなりました。

 

    佳作 (賞金五万円)    『病める時も、健やかなる時も』  武 浩幸

    審査員特別賞 (賞金ナシ) 『この度は、誠にご愁傷様で……』 小島恒夫

             ●

    再応募枠該当作品 『家は燃えているか』/『我が友ドラキュラ』

 

 

『病める時も、健やかなる時も』の武浩幸さんは、第2回にも応募。格段の進歩で

す。武さんは昨年テアトル・エコーさんの創作戯曲募集でも佳作入選されています。

ノってはりますね。当作品は恐らくエコーさんにも応募されたものを推敲してこちら

へ応募されたものと推察します。構いませんよ。うちは他に出されたものでも優秀な

コメディを求めていますから。

この作品は来年上演します。詳細は後日NLTのホームページで。

 

『この度は、誠にご愁傷様で……』の小島恒夫さんは人生の大ベテラン。その味が随

所に出ています。第3回目に初めて応募され、その時は一次は通過しましたが、二次

には進みませんでした。それが昨年は最終候補。再応募枠となり、再応募からは初め

ての受賞です。感服いたしました。

この作品はストックさせていただきます。近々に上演したいと思っています。

 

再応募枠該当作品に選ばせていただいた2作品。

まず『家は燃えているか』さん。

先程書きました通りです。あ、加えるエピソードは別にボクが言ったものじゃなくて

も構いません。もっと面白く皮肉なものもあるかもしれません。それらの困った出来

事に対して右往左往する家族の姿が、黙ってみている息子の心に、何か響けばいいで

すね。

とにかく、この作品、1本立てで張るんだ! の気構えでお願いします。あ、でも、

40ページ内でお願いしますね。1割までなら超過も大丈夫ですから。

 

続いて『我が友ドラキュラ』さん。

最終5本に選ばれなかったのに再応募枠は異例です。ですが上位5本と僅差だったこ

と、アイデア点が最も高かったこと、僭越ですがボクが直せば直ぐにも何とかなると

思ったこと等々、なので審査員一同の賛同を得て、再応募にさせていただきました。

特に山﨑哲史が強く推しましたよ。( ´∀` )

直しは、劇中芝居から始めてもと最初は思いましたが、ごめんなさい、構成はこのま

までもいいと思います。

次におチャラケセリフはやめましょう。そんなものなくっても話自体がすごく面白い

です。特に時代を感じさせるおチャラケセリフはカットしてくださいね。もし上演す

ることがあったとしてその時には忘却の彼方ですよ。「ズバリ言うわよ」とか。これ

はもう既に忘却ですが。そういうのは稽古で役者が考えますから。講談調もいりませ

ん。入れ歯の腹話術はあってもいいかな。

次に、ヴァンは最後の最後まで本物のドラキュラと気づかなくってもいいと思います

よ。酔狂なじいちゃんがドラキュラになったつもりだと。デーモン閣下みたいに。

あ、デーモン閣下は本物でしたね。そうか?( ´∀` ) 最後に「本物だったの!」で

いいと思いますよ。二人の思惑のズレと、なのに協力している。そのズレそのものが

面白くなると思います。

となると、なぜ伯爵は芝居に出る気になるのか。伯爵は、もう生きていたくない。生

きてることに疲れてるわけですよね。何の楽しみもないし。そこへ芝居に出てくれと

頼まれる。初めて、生きている気になれるかも知れないと思い引き受ける。

死ねないものが死にたくなり、でも生きようと思う。でもその時には婆さんの杭

が……

ね、切ないでしょ。

 

 

ご両所とも、これは例年言っていますが、再応募は初応募に比べ採点が厳しくなりま

す。直して応募されても受賞に至るのは至難です。なので無視してくださっても構い

ません。その時には新作をお待ちしていますよ。

そう考えると『この度は、誠にご愁傷様で……』の小島さんは立派でしょ。

とにかく、再応募か、新作か、お待ちしていますね。

 

お二人以外の方は、同じ作品での応募はご遠慮ください。 

 

 

 

 

さて、応募くださいました全ての皆様に感謝申し上げます。

来年も第6回を開催いたします。皆様の、優れた楽しいコメディ作品をお待ちしてお

ります。

お疲れさまでした。

 

 

                            代表筆 池田政之

 

                       審査員 劇団代表 川端槇二

                           制作代表 小川 浩

                           運営委員 木村有里

                                渡辺 力 

                                杉山美穂子 

                                泉関奈津子

                                竹内一貴

                                安奈ゆかり

                           企画部員 加納健次

                                海宝弘之

                                池田政之

                                小林 史

                                根本拓人

                                山﨑哲史

                                松岡 翔

    

 

 

 

 

 

 

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