劇団〈ま〉『劇場』で訳・脚本・演出? 8月27日

池田政之の仕事

 

 

今年は2年に一度の劇団〈ま〉の上演年。

 

で、やります。

 

今年はなんとNLTとの提携です。

 

トップページに情報を上げています。

 

更にはNLTのホームページにも詳しく掲載されています。

 

これです。

 

 

 

 

 

 

 

主役は元宝塚男役スターの旺なつきさん。

 

ボク、21年ぶりです。

 

平成3年萩尾望都さん原作の『アロイス』

5年から三越劇場で淡島千景先生の『花の茶碗』6年『花の元禄後始末』

7年『水戸黄門の妻』とお仕事して以来なんですよ。な、な、なんとでしょ。

 

2014年紀伊国屋演劇賞を受賞されて

今乗りに乗ってる演劇人のロムさん。(旺さんの愛称)

メッチャ楽しみでやんす。

 

更には俳優座の河内浩君、仮面ライダー出演の溝呂木賢クン、

昨年の『嫁も姑もみな幽霊』の吉田大輝クン。

そしてNLTから平松慎吾さん、川島一平さん、阿知波悟美さん、小林勇樹さんの

大先輩に、安奈ゆかり、由川信幸、根本拓人、三井千寿、霜垣真由美、大槻千草、

松岡翔の後輩たちの揃い踏みです。

 

 

裏面はこちら。

 

 

 

 

 

 

 

原作は文豪サマセット・モームの傑作長編小説。

それをボクが訳・脚本・演出です。

 

こちらが台本。

 

 

 

 

 

 

 

今、ん?と思われませんでした?

 

作、脚本、演出はいつものこと、そりゃ本職ですから。

 

それが今度は翻訳も???

 

 

実は……

 

2007年楽しみにしていた米映画がようやく公開されました。

『華麗なる恋の舞台で』

米公開は2004年。そのタイトルは『ビーイング・ジュリア』

主演はアネット・ベニングです。

その年のアカデミー賞にノミネート。

でも受賞は『ミリオンダラーベイビー』のヒラリー・スワンク。

ボク、アネット・ベニングが結構好きで、この残念な結果に

『ビーイング・ジュリア』ってどんな話かと調べました。

そうしたらモームの『劇場』ではありませんか。

 

ボクの地元に越川正三先生という大学教授がいらして(現関西大学名誉教授)

高校のころ親しくして頂いていました。

先生はモーム研究の第一人者で、その関係から『劇場』も読んでいました。

が、ミステリーしか覚えてないような奴なので、忘れていました。

それが、おぼろげながら当時のことがよみがえり、

余計、映画を見るのが楽しみになっていました。

 

2007年果たして見た瞬間「これはNLTで舞台になる」と確信しました。

 

早速、押し入れから瀧口直太郎早稲田教授翻訳の新潮文庫版を引っ張り出し、

更に中野好夫東大教授翻訳の集英社版を買って読み、

小説内に登場する舞台の原作戯曲ビネロウの『二度目のタンカレ夫人』を

地元の図書館から兵庫県内の図書館を探してもらって、

姫路のお城の近くの図書館まで行って読み、

脚本化して、NLTに提案しました。

しかし、諸般の事情で実現しませんでした。2008年のことです。

 

今回(ちょうど一年前)NLTの制作O氏とこれをやろうとなったとき、

ボクは一からすべてやり直そうと思い、

つまり翻訳からすべて自分の手でやり直そうと、

ネットで原書を取り寄せ(便利な世の中になりました)

辞書を片手に少しずつ訳し、改めて脚本化しました。

今年の春のことでごんす。

 

 

しかし、池田に訳なんてできるのか、と、思ってる同級生いっぱいいるやろな。

なんせ、英語苦手やったからなぁ。よく中学で英検三級とれたなぁ。

よく大学受かったなぁ。よく大学で必須科目だった英語の単位とれたよなぁ。

そのレベルです。

 

 

でも、越川先生の解説本と瀧口版を大昔に読み、2007年映画を見て、

瀧口版を読み直し、中野版まで読んで、2008年に一度脚本しているんです。

ちなみに映画って原作に忠実ですよ。

つまりストーリーが頭に入ってるんですよ。

なので、原書、読める読める。

つまりは分かっているストーリーをもう一度確認しているだけみたいなもんです。

はい、インチキでやんす。(笑)

 

 

でも、下手な直訳でもとりあえず訳し終わり、

それから2016年版としての改めての脚本化作業。

 

 

翻訳と脚本は全く違います。

 

 

翻訳は、元の原書を一切逸脱してはいけません。

登場人物も場面もストーリーも一切変えてはいけません。

 

もちろん、一切逸脱しない中でその力量を競うわけですから、

翻訳家として一家をなしてらっしゃる先生方の実力は、

恐るべきものです。

直訳レベルのボクなんか、全く世間的には通用しません。

 

ではなぜボクごときのレベルでもOKなのか。

それはそのあとに脚本作業があるからなのです。

 

脚本は、翻訳と違い、原作から一歩も逸脱してはいけないなんてことはありません。

 

脚本は、舞台、映画、テレビによってすべて違うし、

それぞれの特色によって、更には制作的事情、俳優行政的事情、

例えば、皆さんにも覚えがあるでしょ。小説や漫画を読んでいて、

それがテレビドラマになったとたん、主人公が男から女に代わってたり、

結末が変わっていたり……

 

つまり、脚本は原作とは違うものとしてかなりの変更を

許容される世界でもあるのです。

 

つまり、小説や戯曲の翻訳と違って、小説を翻訳しそれを脚本化する作業は

別物なのです。

 

 

あ、そうそう。

もう一つ、脚本化するときに大切なこと。

それは、原作者の了解を得ることです。

 

ボクも舞台やテレビで原作のあるものの脚本化を何本もしています。

現在活躍されている先生の作品を脚本化するときはその先生の、

亡くなられているときはご遺族の了解が必要です。

 

その了解の上で、好きにできるわけです。

 

山本一力先生も、津本陽先生も、藤沢周平先生のご遺族の方も、

他の先生方も、快くお許しくださいました。

 

今回はサマセット・モームです。

モームは亡くなって50年以上たっております。

著作権は今の法律では50年なので、それでも一応NLTのO氏が確認したところ

ご自由にとのこと。

なのでこういう脚本にできたというわけです。

 

 

こういう脚本って?

はい、ボクの脚本では、

長い物語、たくさんの場面をたった一つの劇場の舞台上一つにしました。

多くの登場人物も大半を割愛。総勢15人の出演者で演じられるようにしました。

 

 

つまり、ボクごときの直訳でも、そのあとに脚本化作業があるから

成立しているというわけです。

 

 

これが、外国の小説を脚本化したその脚本を輸入して、その脚本を訳する作業と、

外国の小説を日本人の手で直接脚本化する作業の大きな違いなのです。

 

 

あ、そうそう。

劇中の『二度目のタンカレ夫人』は、その後日談が新作で書かれた、という設定に

して、ボクがオリジナルで書きました。

 

 

こうして2016年版の脚本が出来上がったわけでごんす!

 

 

 

2008年より8年ごしの舞台が、10月25日に初日を迎えます。

 

 

皆さま、ぜひぜひ、ご覧くださいまし。

 

 

 

 

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