62冊を読み終えて 8月28日

〈ま〉の日常 池田政之の仕事

 

 

 

新人賞応募作。

読み終えました、62冊。

 

 

 

 

 

 

昨年は11本。

なのでまず下読みはボク一人でやりました。

上位6本と下位5本に差ができたので、すんなりといきました。

で、全部の作品にコメントを載せて審査員に言上しました。

でも11本だったので、審査員の方もみんな読みましたよ。

 

今年はボクの予想では20~30本。

なので下読みは今年もボク一人で大丈夫と言いました。

 

来年は恐らく50本くらいになるでしょうから、文芸演出部の山崎クンたちにも

協力してもらおうと、本人らの了解も得てました。

ここで一次審査で半分以下に絞って、審査員に言上しようと思っていました。 

 

それがなんと62本。

でも、まずの下読みはボク一人でやりますよと言い切ってしまっていたので、

今年もボク一人でやり終えましたというわけです。

 

流石に疲れましたが。(笑) 

 

でも、皆様の想いが詰まっている応募作です。

一所懸命読みました。

 

 

 

今月8日のここでも書いた通り、

応募作としての不備を抱えた作品、つまり、枚数超過作品、横書き、

登場人物記載なし、ページ記載なし、あらすじなし、年齢明記なし、の作品も、

今回はとりあえず不問にして、キチンと読ませて頂きましたよ。2回づつ。 

で、審査員提出用に全ての作品にコメントを書きました。

 

 

更に去年も書きましたが、ボクは

 

①アイデア(オリジナ性も含む) / ②文章・台詞 / ③構成・展開 / 

④喜劇性(遂行の可能性も含む) / ⑤完成度 / の5項目各10点

計50点満点で読みました。

 

 

採点すると4つのブロックに分かれました。

 

Ⓐおもしろい!!! / Ⓑおもしろい / Ⓒまぁなるほどね / 

Ⓓまだまだお勉強ですね / です。

 

 

そのうち、ⒶとⒷの作品をボク自身の一時通過として明記し、

それに、62本全作品へのコメントを添えた10ページのA4のレポートにして、

全審査委員に言上致しました。

 

9月から10月にかけて2度に渡る審査会が開かれるわけです。

 

 

 

ここで、中身に対して少し。

 

我々は読む戯曲ではなく、現実に上演を見据えての新人賞と

何度も申しました。

なので、面白いお話で、それなりによくできている作品でも

上演不可能な作品は、マイナス5点 と致しました。

なぜ、上演不可能なのかは、発表の時に申しますね。

 

 

 

次に、予想通り大超過作品の中に、冗漫になっているものがあり、

どうしても超過の分、〈構成・展開〉や〈完成度〉の点が辛くなってしまいますね。

 

逆に、波乱ある展開を、キチンと枚数内に収めてらっしゃる作品は、

〈構成・展開〉と〈完成度〉の点数がそりゃ好得点になりますよね。

 

プロ、つまり職業としての脚本家になると、本当に多くの制約が課せられます。

その中に時間的制約があります。

テレビの1時間ドラマなら実質42・3分です。

舞台も、自分たちで劇団を作ってやりたいものを上演なさっている方々には

時間的制限はないでしょうが、職業作家には100%制限があるのです。

商業演劇なら一幕の時間も、全体の時間も、興行によって定められるのです。

 

1割程度の多少なら、演出家や、テレビなら優秀な編集の方が何とでも

してくれるでしょう。

でもそれ以上の超過した脚本を提出したら、「直せ」と突き返されます。

それが出来なかったら、降ろされるのです。

で、どんな条件もクリアしてくれる脚本家へ緊急で注文が行く。

ボク、何本もこなしましたよ、緊急代打。

職業として成立させている脚本家はみんなこれができるのです。

 

つまり、新人賞の枚数制限とは、プロになる為の大事な通過点なのですよ。

 

 

 

更には、喜劇(コメディ)の意味がよく分かってらっしゃらないのでは?

と思われる作品も結構ありました。

 

喜劇(コメディ)には大きく分けると二つの分野があります。

ものすごくおおざっぱに分けるとですが。

 

1つはストリーリーに重点を置くもの。笑えるストーリーです。 

もう1つは人間に重点を置くもの。その人間そのもののおかしさです。

 

そのどちらか、あるいは2つが合体したものが喜劇(コメディ)です。

 

全く喜劇(コメディ)ではない作品に、ダジャレやおやじギャグや

お笑いのようなセリフをぶち込んでも、それは喜劇(コメディ)ではありません。

 

あ、今は 喜劇=コメディ として書いてますよ。

つまりコメディ=喜劇。ファルスも含む喜劇ですよ。

昔の、演劇を指すコメディや、ヴィクトリアン・サルドゥが使ったコメディでは

ありませんよ。

せいぜい、チェーホフまでですよ。

 

余談ですが、チェーホフという人は実に厄介な人ですねぇ。

若いころはファルスやボードビルをいっぱい書いてるのに、

代表作は 喜劇『かもめ』『ワーニャ伯父さん』『三人姉妹』『桜の園』。

あれは喜劇ではありません。

でも喜劇です。

だって本人が喜劇って言ってんですから。

で、後年の学者は悩み続けているわけです。

 

でも、2つのことを考えれば喜劇といえるのです。

1つは書かれた時代背景。ロマノフ王朝末期の世情です。

特に『桜の園』は顕著です。

もう1つは……それはまだ後日に。

だって、人間の真実の姿を映したまま喜劇にしてしまえるのか、を

ここまで追及している作品群を、そんな簡単には論じきれませんもの。

 

とにかく、喜劇がよくわからないという方は、

10月25~30日のNLT・劇団〈ま〉提携の『劇場』、

12月13・14日のNLT『oh! マイママ』

を是非ご覧ください。

タイプの違うコメディ2題。

参考になると思います。

案内を送るかもしれませんので。宣伝かい。

 

 

 

さぁ、これから2回の審査会を経て、結果が出るわけです。

 

 

結果は10月末です。

 

 

もう少しお待ちくださいまし。

 

 

 

 

 

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