第6回NLTコメディ新人戯曲賞が決定しました。 10月17日

審査員 池田政之の仕事

 

  

お待たせ致しました。

第6回NLTコメディ新人戯曲賞が決定しました。

 

 

 

 

 

 

 

本日、劇団のホームページにて発表致しましたが、例年通りここでも補足して載

せておきます。

これも例年通りですが、以下の文にはボクの個人的な意見も入っています。なの

で気にしたくない方は気にしないでください。

 

 

 

今年は51本の応募がありました。

まずは応募くださった皆様、お疲れさまでした。ありがとうございました。 

 

 

 

今年の傾向としては、特に上位に〈惜しい〉と思える作品が多くて……

 

幽霊や異界のものが登場する作品が6本。約1割強。減りましたね。(^O^)

 

今年も、映像の (特に映画の) 脚本と思えるもの、というより完全に映画じゃんと思

えるものをそのまま送ってこられた方がいらっしゃいました。というか今年はそれが

何本も。

この賞の対象は舞台脚本・すなわち戯曲です。映画のシナリオではありません。どん

なに優れていても無理です。優れていれば優れているほど余計無理です。舞台に直す

意味がなくなってきますから。毎年言っています。

 

もう一つ。我々が求めているのはコメディの戯曲です。なのに、どうひっくり返して

読んでみても喜劇ではないのが何本も。となると、映画で、しかも喜劇ではないもの

なんてどうすりゃいいんだ。それがよく出来ていれば尚のこと。本来なら失格です。

とにかく応募される前に、もう一度ご確認ください。確認することか?

 

 

 

例年通り〈アイデア(オリジナル性含む)〉〈文章・台詞〉〈構成・展開〉〈喜劇性〉

〈完成度(推敲の可能性含む)〉の5項目各10点 計50点満点で採点し、4つのブロッ

クに分けました。〈面白い!〉〈面白い〉〈成程ね……〉〈もっとお勉強を〉です。

 

そのうち〈面白い!〉〈面白い〉の13本を一次通過作品として、全作品の寸評を載

せた採点表と共に審査員に言上し、そこから更に6本に絞りました。

 

 

 

一次通過は以下の13作品です。 

   欧米カツレツ君の縄の作り方

   ネヴォの春秋

   我が友ドラキュラ 

   マスターの災難

   ハニートラブル

   母さんの遺した物

   ゴールデンアワー

   惑星ソリュージョ

   門

   令和仇討電子之小波

   大江戸ジェンダー

   心一つに立ち上がれ!

   サイエンス&テクノロジー・スーパーハイスクール

 

   

更に絞った6本です。 

   黄昏の欧米カツレツ君の縄の作り方

   ネヴォの春秋

   我が友ドラキュラ

   マスターの災難

   ハニートラブル

   母さんの遺した物

  

これら6本を最終候補と致しました。いつも最終候補は5本です。なので1本減らす

か、と思ったのですが、2本は同点だったので、そのままにしました。

 

 

   

まずは一次通過の作品です。

 

『ゴールデンアワー』

今あるシチュエーションはもうダメ、で、タイムリミットまでに何とかしなければ

終わり……という話は、言ってみれば常套です。しかもその世界が……過去同じパ

ターンが数本もありました。お笑い芸人設定、みんな好きやなぁ。でも、そこそこ

書けてます。でもね、よくあるパターンだと余程突き抜けないと、難しいんですよ。

 

 

『惑星ソリュージョ』

発想は面白いんです。すごく面白い。でも、軽い。そして進行が不用意です。もっ

としっかりと書き込んでほしい。それで超過したら、それから凝縮していけばいい

んです。

 

 

『門』

ヒットラー秘話の後日物語。いいアイデアですよ。うまく書けば残るアイデアです。

でも映像的です。というより小劇場的か。これを一杯道具(ワンセット) の話にすれ

ば最終に残る作品にはなったでしょうね。

そうなんですよ。多幕もの、そのつど場面を変えるのは、ものすごく楽なんです。

そこを一つのセットで全てやってのける。そこが舞台の醍醐味なんですよ。シェイ

クスピアは自由に場面を飛びまくってるじゃないか! と思われる方もいるでしょう。

でもね、あの時代はまだセットを組むという概念がほぼないんです。後年セットを

組むようになった。進歩なんです。昭和半ば、小劇場運動がそんなの無視し、自身

の自在な世界観を作り出した。それは大道具の概念が分かった上で、あえて飛んで

みせてるんです。ただ書きやすいから場面を変えてるんじゃないんです。もう一つ

は歌舞伎や商業演劇のような多幕もの。でもね、それはセットの転換、着替えの時

間、それらをすべて考慮の上書かれています。それに変えたとしても(1幕)1時間

にせいぜい4場から5場です。小劇場の作家が出てくると15場くらいやっちゃいま

すけどね。それと宝塚も。(^O^) あ、宝塚はあの世界が素敵なんですけどね。ボ

ク大好きです。子供のころから観てるので。(^.^)

勿論、この作品は自由で良い、という作品もあります。でも、安易に場面を変えて

いるだけ、という作品の何と多いことか。➀映像、➁思いついた話の流れに沿って

場面を変える、その2パターンの作品の何と多いことか。それが許されるのは、絶

対にそれが必要な世界観の作品と、制作的にそれが求められている作品 (商業演劇

のような) だけなんです。その場合はそれに対する対策がキチンと取られているん

です。

ごめんなさい。これは貴方だけじゃありません。あまりに多くて。はっきり言って

半分近くがそうなんです。そういう作品の中で、貴方の作品が最高点だったので、

あえて貴方の作品で小言を言わせていただきました。お許しください。だって惜し

いんですもの。そしてボク、ワンセットに直せますもの。

 

 

『令和仇討電子之小波』

曽我兄弟の現在版。意欲作ですよ。タイトルもキチンと奇数だし。でも、なんだろ

う、波瀾万丈とハラハラが少ないのかなぁ。発端と、派手でエグい仇討の場だけと

いうか。労作なのに、惜しいなぁ。

 

 

『大江戸ジェンダー』

惜しいなぁ。面白いし、アイデアはいいし。でも、文章も構成も着替え等々、舞台

のことがまだまだ未熟なんですよ。最後はなんだかSF的だし。とにかくもっとも

っと戯曲のお勉強をして下さい。その上でもう一度この話を一から書いてみてくだ

さい。きっと見違える作品になりますよ。

 

 

『心を一つに立ち上がれ!』

古風ですねぇ。発想もいいし、何より物語の経過が具体的です。これは大事なこと

ですよ。ただ、世界観の表現法が古風すぎて、現在劇としては、リアリティに問題

が出てしまっているように思えてしまうんです。惜しいなぁ。そういう世界観を目

指していらっしゃるのなら……その世界観、今、この話に、必要かなぁ……

 

 

『サイエンス&テクノロジー・ハイスクール』

舞台戯曲というものをもう一度勉強してください。登場人物約60人。着替えどうす

んの。なのに………面白い! 特に喜劇的セリフがうまい! 本当ですよ。センスは

おありになるんだと思います。これは深夜枠の2時間スペシャルコメデイドラマで

すな。でも、ちょっと若手の勉強会でやってみたいような気が。(#^.^#)

 

  

 

さて、最終の6本です。 

 

『黄昏の欧米カツレツ君の縄の作り方』

以前にも最終候補になられた方です。

うまいなぁ。アイデアもいいし。ボク、こりゃ初めて正賞が出るかぁ、と思って読

んでました。たった一つの不安を抱きながら……当たっちまったぜ、不安が。解決

法です。最後の解決。まぁあれしかないと言えばそうかもしれません。でも、読ん

だ審査員、みんな同じこと思ったそうです、こう解決させるんじゃないかな、と。

つまり、始まった時から、(これはそういう話と分かった時から)、結末が見えてる

んです。そりゃそうです。歴史は無難に修正せねばなりませんものね。けれど……

例えば、4人の中の1人が選ばれるなんてのはどうなんだろ。ダメなんだろうか。

なぜその1人が選ばれるのか。なぜそいつなのか。そこで現れる絶対的な大ロジッ

ク!!! 「そうだったのかぁ!」 お客さんびっくり! ね、そうなれば話は別です。

探偵が4人の容疑者を並べて1人を名指しする。絶対的なロジックによって。且つ

ものすごい意外性をもって。そういう風に出来ないかなぁ。その上で、その選ばれ

た1人に、なぜか後の3人の要素も含まれていて……おもろいな。お客さん「え」

ってなるやろな。(^O^)

どうしよう。これはボク達では直せないな。ここまで書けているものを、やはりご

自身の手で完璧にしていただかないと。ごめんなさい。勝手なことばかり言って。

 

 

『ネヴォの春秋』

いい作品です。実話に基づくいい作品です。特に筆力は大したものです。でも……

さぁいきますよ。(^O^)

あっさりしすぎ。もっともっと書き込んでください。もっともっと、悩み、絶望、希

望、書き込めるはずです。そうなると長くなる。構いません。だってこれは喜劇では

ありませんもの。少なくとも貴方の書き方では喜劇ではありませんもの。もっと書き

込み、推敲し、そして他の新人賞へ出してください。もっと書き込めば、他所なら最

終候補になるレベルです。

本当なら最終に残すタイプではありません。でもボクは残したかった。審査員一同に

読んでもらいたかった。

(NLTは不問にしていますが、他所は、他に出した作品はそれだけでボツという所も

あるそうなので) タイトルを変えてどこかへ送ってください。

肝心なことを忘れてました。喜劇性を忘れて評価した場合も、審査員特別賞……の手

前かなぁ。やはり展開のあっさりさが。時代の波に呑まれる人が、特に岡田が (自身

を語る長ゼリはありますが)、惜しい。転んでいく過程が……

 

 

『我が友ドラキュラ』

再応募作品です。これはボクの意見ですよ。惜しい。ものすごく惜しい。今回の応

募作の中で一番惜しい。

過去の再応募作の皆が陥る落とし穴に落ちちゃったかな。あ、昨年の小島さんだけ

は別ですよ。つまりですね、自我が出ちゃうんです。

それでも昨年より進歩をしています。だからここまで来た。ボク、去年のも出して

読み直しましたよ。

ボクは昨年例えば10点満点で7点のものを9点にする直しのアドバイスをしました。

そのまま直されていれば……これは俺の作品だ、俺らしさが必要だ!……それでも

昨年よりよくなっているのは大したもんですけどね。過去の人は……あ、小島さん

は別ですよ。くどいか。(^O^)

この作品はね、キチンと書いて、英訳して、米英で上演すれば残る作品になるレベ

ルを内蔵してるんです。だから昨年、最終の5本に入っていないのに再応募枠にし

たんです。はっきり言って『くたばれハムレット』より全然上。あれ、日本人にと

って潜在的な外人崇拝、洋物コンプレックスの最もたる戯曲だと、ボクは思ってま

すから。というより、達者な役者がやって初めて傑作になる、幕内上演台本だと思

ってますから。海外過剰評価戯曲の代表です。あ、言っちまった。(~_~;)

それより上になるものを内蔵し、それを最もよく出るようにアドバイスをしたつも

りです。プロで食ってる人間の言うことは一度は聞いておきましょうよ。ダメもと

ですやん。

それでも、審査員特別賞クラスにはなっている。さて、どうしましょう。

 

 

『マスターの災難』

昨年の審査員特別賞受賞者の小島さんが、新作を応募してくださいました。素晴らし

い。流石、文章は手慣れたもの。レベルもちゃんとしています。余裕の最終候補です

ね。でも、昨年に比べたら、やはり小粒。ということは……

ごめんなさい。

来年も待ってます。ボク、ファンですから。

 

 

『ハニートラブル』

『母さんの遺した物』

この2本、作風・タイプは全然違いますよ。でも同じことなんです。

前者は、よくある設定でも、作り物のコメディとしてよく出来ています。(作り物

というのは誉め言葉ですよ。ボク、作り物大好きですから)

後者は、よくある話 (作者の実体験のような) をよくあるようにおさめています。

どちらもセリフもよく、面白く読ませていただきました。レベルもここまで来る

レベルです。でも……

よくある設定、お話なんです。つまりですね、過去の応募作にも、同じパターン

の話が、前者は2本、後者に至っては4・5本はあったかなぁ。

前者はハニートラップが父親に効いちゃったところは目新しく、でも目的の人物

以外に効いちゃってさぁ大変というパターンはよくあるんですよ。あ、吉本にも

あった。父親役の池乃めだかさんに効いちゃって、というのが。(^O^)

後者は遺産を巡る人間喜劇です。遺産を巡るドタバタコメディまで入れると10本

くらいにはなるかな。ま、でもこちらは人間喜劇だからドタバタは数に入れない

でおきましょう。それでも4・5本はあるし、結末もほぼ同じなんですよ。

勿論共に出来が良かったから最終になったんだし、でも、結末もほぼ同じ、すご

く似てる。となると、読んでいても、又上演になったとしても、観ていてやはり

「よくある話ね」感は否めません。

いいんですよ、よくある話でも。過去の作品よりはるかに上を行ければ。つまり、

多くの人が思いつく話の場合、過去の舞台やテレビドラマによくある話の場合は、

余程突き抜けないと。

これが既存の作家なら、今回はよくある話を自分流に書いてみました、で済むで

しょう。でも新人賞の応募作なんです。厳しい新人賞ならその時点で脱落でしょ

う。でもボクは採点表に基づいて審査しています。だからここまで来た。

先日のプレバト (9月24日放送やったかな) で、東大王とレギュラー陣の対戦で、

鶴崎修功クンの句「休暇果つノートに新規性ひとつ」の説明で、論文は新しいも

のがないとダメだ、たった一つでも新たなるものを発見しなければ……というの

がありました。つまり、ここから次へ行くには……やはり大きなハードルなんで

しょうか。ご理解ください。

 

   

 

さぁこうなると、はっきり言って争うのは2作。

『黄昏の欧米カツレツ君の縄の作り方』と『我が友ドラキュラ』です。 

 

本当にどうしようかと一同悩みに悩みました。『黄昏の……』は解決が、『ドラキ

ュラ』は直しがキチンと出来ていれば……そうなれば、ボクは佳作に推しました。

 

   

一同、悩みに悩んだ結果、以下のようになりました。

 

    正賞   ナシ

    佳作   ナシ

    審査員特別賞   『我が友ドラキュラ』  大田裕康さん (賞金ナシ)

                ●

    再応募枠該当作品 『黄昏の欧米カツレツ君の縄の作り方』

 

  

 

『黄昏の欧米カツレツ君の縄の作り方』さん。

正直に言います。今回ボク的には最高点なんです。(他の審査員は2位の方が7割。

その理由はやはり解決法です) です。

でもね、これはここで終わらせてはいけません。完璧な作品にしましょうよ。

直しの内容は先ほど書いた通りです。いえ、もっと面白いことを思いつかれれば、

お任せします。きっとお出来になる方です。本当に、心から、楽しみに待っていま

す。

勿論「もうNLTなんか知らねぇよ。再応募なんてやってられるか」とお思いになら

れれば、他所にお出しになっても構いません。更に再応募は少々厳しくなりますか

ら。ご判断はご自由に。(^O^)

  

 

『我が友ドラキュラ』の大田裕康さん。上記の通りです。上演はまだ決められませ

ん。コロナの所為でいろいろと予定が狂っちまって。(◞‸◟) 

尚、授賞式もですが、今年はコロナの状況を踏まえ、これも改めてご連絡いたしま

す。ご了承ください。

 

  

 

 

来年も第7回を行います。皆様の才気ある素敵で驚くようなコメディ舞台作品を待

っています。

 

多分、何らかの、コロナが関わる話が増えるんでしょうね。

そうそう。来月つまり11月13日発売のテアトロ12月号にエッセイを寄稿しました。

先月の明治座氷川きよしクンの公演におけるコロナとの戦いについてですが、タイ

トルは『コロナと作品内対策』。是非読んでください。執筆のヒントになる筈です。

最後は宣伝かい。m(__)m

 

 

お疲れさまでした。

 

 

 

 

 

 

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