オリジナル性 戯曲とドラマ 8月26日

 日記

 

 

 

台風がようやくおさまったようでごんす。

 

 

 

三越劇場の『嫁も姑も皆幽霊』は順調に飛ばしておりやす。

 

というより、ホントに大ウケで、お客様笑って笑って、泣いて泣いて。

 

あと半分。皆様、是非!

 

 

 

 

さて。

 

ようやく、第一回NLTコメディ新人戯曲賞の応募作をすべて読み終えました。

 

いろんなタイプのコメディがあるものだと改めて感心しております。

 

ボク自身、第一次通過はこれかなぁ、なんて考えていますが、

審査会が開かれますので、他の方の意見や如何に。さてさてどうなりますか?

 

皆様気になるでしょうが、発表までお待ちくださいまし。

 

 

 

 

 

ただ、今ボクは自分の性格を改めて顧みています。

 

それは、

 

若い頃はホンマに天邪鬼な性格やったなぁ、ということです。今でもか。

 

 

 

例えば、どんなにいいストーリー、アイデア、トリック、取り上げたい歴史や人物を

思いついて、戯曲にするため、密かに調査、執筆に入っていても、

他人がやっちゃったら途端に興味が無くなって、やめちゃうという困った性格です。

 

 

日本人て、例えばNHKの大河で信長をやるとなると、皆信長。

小説も,研究書も、書店には信長だらけ。

 

何ででしょうね。

人と同じことするのがそんなにいいのかなぁ。

 

ボクには絶対できませんでした。

 

 

 

 

あれは平成3年でした。

 

戌井市郎先生から「池田クン、三越で利休さんの話、書きませんか」と

電話がありました。

 

30過ぎたばかりの駆け出しのボクにとって、ありがたいお話です。

 

ところがボクは全然乗れませんでした。

 

当時千利休没400年で、映画、テレビドラマ、舞台、小説、研究書……

世は利休であふれかえっていました。

 

「なんで今更ボクが利休さんを書かなあかんねん」

 

生意気にもそう思ったボクは、それでも戌井先生のありがたいお申し出なので、

とりあえず「少し考えさせてください」と言って電話を切りました。

 

直ぐに映画のビデオや、書店や図書館で小説、研究書を20冊もあつめ、

四、五日で全部目を通しました。

 

当時やっていた舞台も慌てて見に行きました。

 

 

驚きました。

全部一緒。

利休さんが世に出るところから切腹まで。

 

 

20冊読んだから言える事ですが、1冊読んだら十分ですよ。

 

 

何で世の先生方は先人と同じものを平然と書いて発表できるんやろ。

 

 

どうすりゃええねん。誰がやってもおんなじやなんて、天邪鬼には耐え難い事です。

こりゃ断るしかないな、と落胆してた時、最後に読んだ研究書の一冊の

終わりの方に、それこそ2ページくらいの短さで、利休家の後日談が載っていて、

そこに、ホンの数行、利休の妻のおりきさんが、利休さんの死後、

お家乗っ取りをした、とありました。何と利休さんの実子を追い出して、

2代目に自分の連れ子を据えたと。つまり茶頭千家は利休さんの技は伝えても、

血は伝えていないことになるのです。(これは近代になってものすごい資料が

発見されて、今では解決していますが)

 

おりきさんといえば、どの映画でもドラマでも小説でも,

良妻、賢妻、妻の鑑と書かれている素晴らしい人です。美しきヒロインです。

しかも茶道三偉人の一人に数えられる人物です。

だから演者も美しき大女優と相場が決まっています。

それがお家乗っ取り?

良妻ではなく、悪女? 

 

ひっかかりました。

 

そこから今度はおりきさんがなぜそんなことをしたのかを調べました。

 

答えは……ありませんでした。

 

後で知ったことですが、その話は茶の世界で長い間タブー、

学者にも今からの研究課題だったそうです。

 

やっと見つけた!

誰も手を付けていないものを!

ボクの勝手で、新しい歴史を作れる題材を!

しかも何百年もタブーだったなんて、ゾクゾクしました。

 

ここでやっとやっと創作意欲がわき、「やらせて頂きます」と返事をし、

利休切腹のその日から始まるおりきさんの物語を書き始めました。

なぜおりきさんは乗っ取りをしたのか?

 

タイトルは『利休夫人の謀(はかりごと)』

 

書き上げた戯曲が三越さんから、三越のカルチャースクールの講師でもあった

鈴木宗卓先生(NHK大河の茶道指導でも有名です)に渡り、そこからなんと

表千家のお家元に渡り、ご宗家のメッセージがボクの所まで届きました。

「お手柔らかに」

 

タイトルは『花の茶碗 ~利休とその妻~』と代わり、

平成5年の4月公演になりました。

 

おりきさんに淡島千景先生、利休さんに島田正吾先生、

旺なつきさん、こだま愛さん、NLTからは同期の葛城ゆいが出ました。

演出は勿論戌井先生。

 

利休の妻とその謎を扱った初めての作品として、

ボクが初めて評論家に認められた作品です。

朝日や読売等各新聞に劇評が載り、小田島先生が東京上半期の総括で誉めて下さり、

再再演までになりました。

 

ボクを指名して下さった戌井先生には心から感謝しています。

そのままボクで行かせて下さった三越劇場さんにも感謝しています。

 

でも…… 

 

ボクは思います。

利休さんが流行っているからと言ってそれに便乗しないでよかったと。

もっとも、性格的に絶対便乗は出来ませんけどね。

 

 

これが、ボクがこだわるオリジナル性です。

 

若い頃は特にこだわりまくったオリジナル性です。

 

 

 

なのに…

 

 

 

NHKのドラマが2本最終回を迎えました。

藤原紀香さん主演の『ある日、アヒルバス』と

仲間由紀恵さん主演の『美女と男子』です。

 

 

アヒルバスは終盤に星由里子さんと森岡豊クンが出てきましたね。

それも親子役で。(笑)

お二人からそれぞれ連絡もいただいていました。

待ち時間、さぞ池田の悪口で盛り上がったでしょう(笑)。

 

で、観ました。

 

こちらです。

 

 

 

 

 

 

お、親子している。

森岡、うまくなったなぁ。それは又会った時に。

 

 

さらに、柳生十兵衛七番勝負島原の乱で一緒やった松浦善之助クンから、

『美女と男子』のメイン演出するよ、と連絡があってずっと観てました。

それはこっち。

 

 

 

 

 

 

 

 

どっちも面白かった。

毎週楽しみやった。

 

 

さて、問題はここから。

 

この2つのドラマ、構造は一緒です。

 

バリバリのОLやけどもう若くない(失礼)ヒロインが、片やリストラ、片や左遷で、

新しいショボい職場に来て(片や弱小バス会社のバスガイド、片や弱小芸能プロの

マネージャーとして)……恋人(夫)との別れ、挫折、立ち直り、人とふれあい、

人情にふれ、アイデアをだし、その間には乗っ取りや、裏切りがあって……。

でも最後にはハッピーエンド、というより、まだまだこれからも頑張っていくぞぉ!

というドラマです。

 

同じです。

 

NHKさん、よく同時期に同じドラマやったなぁ。

 

 

それよりももっと深刻なのは、2つ。

 

1つは脚本がどちらもゆるいゆるい。

池井戸ドラマのようなピリピリした緊張感や、えげつなさや、

その分のドンデン感など皆無。そうかて結末読める読める。

ドンデンなんか理詰めじゃなく人情なんやもん。養成所の青春人情芝居か。

 

 

2つ目は……問題はこちら。

あったで、おんなじようなドラマ。今までにいくらでも。

マネージャー奮闘記も、バスガイド奮戦記も。

つまりオリジナル性薄い薄い。

 

はっきり言って何を今更。しかもゆるいし。

ボク的には、どちらも失敗作です。

 

 

でも、面白かった。

毎週放送が楽しみやった。

毎週「あ、今日は美女と男子の日や」と思ってしまいました。

「アヒルバス、来週もう最終回なん?」と思ってしまいました。

 

 

何なんやろこれ。

よくある、本当によくある目新しさゼロの、しかもゆるいドラマにクギ付けって。

 

 

 

大衆心理なんでしょうな。

そう、ボクだってテレビの前では大衆なんですな。

 

それと、やはり作り手、つまり作家、演出家、役者、スタッフが職人、

そう、プロなんでしょうな。

 

だからあのゆるさが、完成度の高い安心感になったんでしょうな。

で、ハマってしまったんでしょうな。

 

それと形を変えた勧善懲悪。ゆるいけど絶対うまくいくというもう一つの安心感。

 

 

 

これは、かつての駆け出しの頃のボクや、新人には出来ないことでしょうね。

 

 

 

 

 

新人とオリジナル性。

 

片やプロの職人芸。

 

そんなことを考えてしまいました。

 

ボクはプロになれたかな……

 

  

 

 

 

 

« »