ラットマン 10月31日

読書感想文

 

朝の四時です。 

 

今僕は感動しています。

 

今日、あ、もう昨日か。

大阪へ向かう新幹線の中で、道尾秀介氏のラットマンを読み始めました。

半分読んで、残りを執筆の合間にと、今読み終えました。

 

 

 

 

 

先日ここに書きました。今道尾氏を読んでいる。一日一冊、四日で四冊。

中三日の五冊目です。

 

僕は、趣味としての読書は(仕事の資料ではなく)ミステリー専門です。

それもいわゆる本格物つまりは探偵ものです。

 

道尾氏は賞総なめの才人ですが、僕が買ってきた五冊は、

あくまでミステリーです。ですから、直木賞受賞作といえども、

ミステリー要素の薄いものは買っていません。

 

ミステリー、特に本格物は、仕掛け、トリックが見せ場です。

乱暴に言えば、そこに人間を描く必要などありません。

いかに遊戯性、パズル性、トリック、ロジックが優れているか。

そしていかに騙してくれるのか、これにつきます。

 

つまりミステリーの長所であり短所なのは、

ミステリー性と人間描写が相反するところなのです。

 

それが………

 

傑作です。実に傑作です。前の四冊、ぶっ飛んでしまいました。

最後は泣いてしまいました。

 

しっかり描かれている人間。なのに怒涛のドンデン返し!

 

氏は「本格ミステリーで人間を描く」と公言したという。「そんな馬鹿な」と

タカをくくった青鬼赤鬼諸氏の常識を見事に覆して見せたという前評判は

間違いじゃなかった。

これは確かにミステリーだ。しかも本格物だ。

 

高校の時に読んだ中井英夫氏の『虚無への供物』

横溝正史先生の『女王蜂』以来かなぁ。

 

氏の特に素晴らしいのはミスディレクション(ミスリード)の巧みさでしょうね。

読者をわざと間違った方向に導く。つまり勘違いをさせ、まんまと騙すわけです。

真実が分かった時、読者は「おいおいおい! ちょっと待たんかい!」と

なるのですが、前に戻って確認すると、インチキなしの、ちゃんとフェアプレーの

精神にのっとって、事実は提示されているのです。

勿論、大抵のミステリーにはこの手法が使われています。Aが犯人と思わせておい

て、実は違ったってのは定番ですよね。

道尾氏はこの手の仕掛けが巧みなのです。その中でも当作品は特に秀逸なのです。

ここまでのは、小泉貴美子女史の『弁護側の証人』と、歌舞伎の『盟三五大切』

(かみかけてさんごたいせつ、と読みます)くらいかなぁ。

あ、歌だけど梓みちよさんの「ナラタージュ」 あれはすごいよ。

 

しかしまぁ、若き天才て、いてんねんなぁ。

二十一年前、若干21歳の麻耶雄嵩氏のデビュー作・ガチガチの探偵もの

『翼ある闇』を読んだ時を思いだすなぁ。

 

是非お勧め、光文社文庫です。

 

 

夜明けまでもう少し。仕事しよっと………

ハマキヨが原稿待ってるし。

 

 

 

 

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